街並みを構成する建物にもストーリーが隠されているのが東京ディズニーシーのこだわりのひとつ。
背景を紐解きながら散策すると新たな発見があり、ディズニーの雰囲気をより楽しめます。
今回ご紹介するのは、そんな東京ディズニーシーの中でもより一層賑わいに溢れたアメリカンウォーターフロントにあるブロードウェイ。
ニューヨークエリアのメインストリートであり、芸術の街としても名高いブロードウェイには、一体どんな一体どのようなお店や施設が隠されているのでしょうか?
東京ディズニーシーのハーバー左側に広がるテーマポート:アメリカンウォーターフロント。
1912年のアメリカを舞台にしたテーマポートで、大きく3つのエリアに分けることができます。
その中でも今回のお話の舞台はニューヨークエリアです。
ニューヨークエリアにはお店が立ち並ぶメインストリートが2つ存在し、それぞれブロードウェイとウォーターストリートという名前がついています。
※以前パークで配布していたガイドマップより
ブロードウェイは華やかな芸術の街路、ウォーターストリートは親しみやすさのある旧市街と同じエリア内でも異なる雰囲気を持っています。
特に建物やインフラなどはかなりの違いがあり、見比べてみると面白いです。
それでは、ニューヨークエリアのメインストリート、ブロードウェイにある建物について紐解いていきましょう。
メディテレーニアンハーバー側から向かって最初に目に入るお店はマクダックス・デパートメントストア(McDuck’s Department Store)というお店です。
こちらは実際に中も同名のお土産ショップになっており、主にダッフィー&フレンズのグッズを取り扱っています。
お店のオーナーはスクルージ・マクダック。
ドナルドの伯父にあたります。
彼は常に金儲けのことばかり考えている世界一リッチなアヒルで、ニューヨークで質屋→問屋→百貨店と次々と事業を成功させました。
マクダックス・デパートメントストアの内装はかつての質屋と問屋を改装して作られているため、エリアごとに異なる雰囲気を味わうことができます。
外観はとても豪華な造りをしており、繊細な模様があしらわれた3階建てです。
お店の前には金貨が連なった噴水もあります。
スクルージは大成功を収めた今もなお更なるお金儲けを画策しているようです。
マクダックス・デパートメントストアの隣にあるこちらの小さなビルは高級毛皮店のクチュール・ファーリア(Couture Furrier)です。
ショーウィンドウには高級そうな毛皮のコートが飾られています。
ドアには「Open」の文字もありますね。
2階や3階の窓には文字が書かれています。
Toppers and Wigs(かつら)やTaxidermist(剥製)も扱っているようです。
しかし、その中のひとつに興味深い表記がありました。
Preserving Wildlifeは野生生物保護という意味です。
毛皮を扱うお店の2階に野生生物保護団体の施設が入っているだなんて…。
続いてはタレントなどに関連するテナントが入っているH.P.メルマンズ・タワー・オブ・タレント(H.P.Melman’s Tower of Talent)です。
H.P.メルマンはタレントの斡旋を行っている人物。
かなりの財力を持っているようで、ブロードウェイにある柱時計も彼が建てました。
時計の上部にはオペラ劇場などで見られる「喜劇と悲劇の仮面」が描かれています。
1階にあるのはトゥーティーズ・ミュージックストア(Tootie’s Music Store)です。
ここでは楽器や楽譜、蓄音機など音楽にまつわる用品が販売されています。
さらにショーウィンドウにたくさん並べられているこちらの小さな巻き紙はピアノロールと呼ばれるものです。
演奏情報が記録された紙製のロールで、SPレコード普及前に家庭用の音楽再生手段として使われていました。
ショーウィンドウには他にも楽譜やシリンダーレコード、著名な作曲家の肖像画など音楽にまつわる様々なものが多数飾られています。
蓄音機は20世紀初頭に実際に実在していたものです。
ショーウィンドウは中々見えにくい位置にあるのですが、かなり見応えのある空間になっているのでぜひ一度覗いてみてもらいスポットです。
2階にあるのはアルトゥーロ・コロラトゥーラ・ボイス・インプレサリオ(Arturo Coloratura Voice Impresario)です。
Impresarioは興行主という意味です。
歌手の事務所のようなものでしょうか。
名前に含まれているColoraturaはソプラノのアリアで盛んに使われた技法です。
歌手を扱うだけあって、名前も音楽用語が用いられているのですね。
窓には「Gotta Sing(歌わなきゃ)」という文字も記されています。
3階に構えるのはバーカーズ・バーカウイズ(Barkers Barkowitz)です。
こちらは動物タレントの事務所。
窓にはDog Trainer(ドッグトレーナー)、Animal Acts of Every Kind(様々な動物タレント)と書かれています。
ブロードウェイでは人間のみならず動物タレントも活躍しているのですね。
実はこちらのビル、地下にもテナントがあります。
地下にあるのはエル・モリーノ・エアリアリスト&ノベルティアクト(El Molino Aerialist & Novelty Acts)です。
エル・モリーノが講師を務める空中曲芸のレッスンスタジオのようです。
カラフルで目を引く看板には空中ブランコを模した絵が描かれています。
…が、地下を覗いてみるととても華やかな曲芸のスタジオがあるとは思えない殺風景な空間が広がっています。
この先がどうなっているのか気になりますね。
続いてはこちらの赤紫色の軒先テントが目を引くこちらの建物です。
ファッション用品店やリハーサルスタジオなどのテナントが入っています。
1階と2階はどちらも「Mimi」という共通の名前が記されていることから、同店舗か系列店だと思われます。
2階の軒先テントにはミミ・ファッションズ(Mimi Fashions)とあります。
その名の通り、こちらはファッションのお店。
ショーウィンドウには装飾がほどこされた華やかなハットが飾られています。
ファーやレースなど使っている素材も様々。
入り口には「Broadway’s Best(ブロードウェイで一番)」と書かれています。
ブロードウェイで活躍するダンサーやシンガーたちを支えるお店なのでしょうね。
3階の袖看板が示すのはハーシュバーグのリハーサルスタジオ(Rehearsal “Hoofer” Hirshberg’s Studio)です。
タップダンサーのハーシュバーグが講師を努めているダンススタジオです。
看板には「Dancer’s Agent(ダンサーエージェント)」とも書かれていることから、ダンサーの斡旋事業も行なっているようです。
実は、3階にはもうひとつテナントが入っています。
ニューヨーク市保存協会(New York City Preservation Society=NYCPS)です。
人気アトラクション「タワー・オブ・テラー」に乗ったことがある方であればピンときたのではないでしょうか。
ニューヨーク市保存協会はホテル・ハイタワーでタワー・オブ・テラーのツアーを開催している団体です。
協会を立ち上げたベアトリス・ローズ・エンディコットが事務所として借りたのがカールッチ・ビルディング3階の一角でした。
ですが、ビルを見てもニューヨーク市保存協会の文字は一切見当たりません。
というのも、ベアトリスはホテル・ハイタワーの残存に反対していた父コーネリアス・エンディコット三世と対立していました。
つまり父から身を隠しながら協会の活動を行うためにひっそりと運営しているのです。
エレクトリックレールウェイの高架下にあり、ブロードウェイとウォーターストリートをつなぐデランシーストリート。
その角に軒を構えるのがモーリス・オブ・ブロードウェイ(Maurice of Broadway)です。
こちらもブロードウェイを支えるビルですね。
1階に軒を構えるのはモーリス・オブ・ブロードウェイ(Maurice of Broadway)です。
看板にClothier(洋服)、Costumier(衣装)と書かれていますが、こちらは舞台衣装を取り扱うお店です。
ショーウィンドウには海賊のような衣装が飾られています。
演劇やオペラに欠かせないお店ですね。
2階にあるのはゲッツ・デル・ウィーゼルのアコーディオン・レッスン(Prof. Goetz der Wiesel Lessons of the accordian)です。
窓には「Our dreams can’t bebeat(私たちの夢は破れない)」という素敵なキャッチコピーが書かれています。
また、3階には「Space available(空きスペースあります)」と書かれた看板が立てられています。
テナント募集中のようですね。
続いては道の反対側の建物についてご紹介していきます。
こちらもメディテレーニアンハーバー側から順に辿っていきましょう。
まず見えてくるのはレンガ造りのこちらの建物。
ハーモニカ・ガーデンズ(Harmonica Gardens)という名前のこちらのビル。
看板にはト音記号のデザインが施されています。
建物の目の前にあるこちらは建設途中の地下鉄の駅。
地下鉄が開通したら、ブロードウェイがより一層賑わいそうですね。
1階にあるのは立体的な看板が印象的なコビー・ラフマニノフ・セレブリティ・テーラー(Cubby Rachmaninov Celebrity Tailor)です。
こちらは高級仕立て屋。
オーダースーツや衣装などを扱っているのでしょうか。
店内は隣接するニューヨーク・デリのダイニングエリアの一部になっているのですが、店内には衣装や裁縫道具が飾られています。
2階にあるのはキャッスル・オブ・コーリンズ(Castle of Chorines)です。
マダム・ローズが講師を務めるコーラスガールのレッスンスタジオです。
ブロードウェイを夢見る女性たちが通っているのでしょうね。
3階の窓には「どんなときにも歌を」「ミュージカル・マーチ・ダンサー」と書かれており、エンターテイメントの街であることを助長しています。
続いての建物に移る前に、こちらの小道についても少し触れておきます。
ハーモニカ・ガーデンズとニューヨーク・デリの間にあるこちらの小道は「ティン・パン・アレー(Tin Pan Alley)」という名前です。
ティン・パン・アレーはブロードウェイに実在した音楽関連会社が集まる通りです。
ティン・パン・アレーは直訳すると錫鍋小路という意味ですが、これは音楽関係者が楽曲の試演を行なっていたため鍋釜を叩いているように賑やかだったことに由来します。
今や楽曲配信やストリーミングで音楽を簡単に試聴できるようになりましたが、当時はまだレコードの先駆け時代。
高価なレコードの中身を宣伝すべく、楽曲を試演していたのです。
ちなみに、トイビル・トロリーパークにあるニューヨークの地図ではこの場所にもう一軒「ラフマニノフ・ビルディング」というビルがあることになっています。
「ラフマニノフ」はおそらくロシアの有名な作曲家セルゲイ・ラフマニノフに由来しています。
現地で見つけることはできませんでしたが、音楽の聖地ティン・パン・アレーにぴったりなネーミングですね。
さて、少し脱線してしまいましたが本題のニューヨーク・デリについてご紹介していきます。
ニューヨーク・デリはサンドウィッチを中心とする軽食を提供するデリカテッセンです。
角の自由の女神の看板が一際目を引きます。
正面にはこのような看板があります。
「Mile High Sandwich(1マイルの高さのサンドウィッチ)」と書いてあります。
1マイルははおよそ1.6km。
さすがにそんなに大きなサンドウィッチはありません(笑)
こちらはアメリカンジョークですね。
ショーウィンドウには、ウインナーなどが飾ってあります。
店内にもさまざまなプロップスがあるので、ぜひ見てみてくださいね。
ニューヨーク・デリのつながっているお隣の建物には、さまざまなテナントが入っています。
2階にはどんなお店が入っているのか、見てみましょう。
まずはロビン・ブラインド出版代理店(Robin Blind Literary Agent)です。
出版関係の会社のようです。
出版代理店のお隣には別のテナントが入っています。
古紙買取業者(Scrap Paper by the Pound)です。
出版代理店の隣に軒を構えるとは、なかなか攻めていますね。
こちらはケンタウロス・フィルム・カンパニー(Centaur Film Co.)です。
映画関係の会社なのでしょうか。
ケンタウロスは古代ギリシャ神話に登場する半人半馬の生き物です。
神話にあやかろうとしているのか、強そうなネーミングですね。
隣の窓に書かれているミュートスコープ(Mutoscope)は初期の映画の装置です。
エンタメが大きく発展したこの時代。
映画も流行っていたのでしょう。
続いてこちらの建物を見ていきましょう。
正面から見ると繊細な模様がほどこされた豪華な外観ですが、右側に回り込んでみるとレンガ造りになっています。
特徴的な作りをしていますね。
1階にあるのはJ.L.サリバンズ・タバーン(J.L. Sullivan’s Tavern)という居酒屋です。
看板や壁など、建物のあらゆるところに「Sullivan’s」と書かれています。
お店の前にあるこちらの装置は、火災報知器です。
街の安全を守ってくれる、大切な存在ですね。
2階にあるのはバラエティアーツ・プレイヤーズクラブ(Variety Arts Player’s Club)です。
様々な芸術家やエンターテイナーが集まるクラブのようです。
看板にはブロードウェイではお馴染みの喜劇と悲劇の仮面も描かれています。
「Members Only(会員限定)」と書いてあることから、VIPが集まっていそうな雰囲気が…?
2階にはもうひとつテナントが入っています。
スロックモートン&サンズ・シーネックスタジオ(Throckmorton & sons scenic studios)です。
親子で経営している舞台稽古のスタジオです。
演劇に使う舞台装置やカーテンなども取り扱っているそうですよ。
窓から見えるカーテンも豪華で素敵ですね。
エレクトリックレールウェイの車庫を挟み、続いて見えてくる建物がこちら。
ニューヨークグローブ通信(The New York Globe Telegraph)です。
実はアトラクション「タワー・オブ・テラー」とも関係がある建物でもあります。
ニューヨークグローブ通信の経営者は、アメリカンウォーターフロントで大成功を収めたコーネリアス・エンディコット三世。
実は、彼はタワー・オブ・テラーのキーパーソンであるハリソン・ハイタワー三世のライバルでもあります。
ニューヨークグローブ通信は新聞、海運業のガイドブックなどを出版しています。
タワー・オブ・テラー周辺にはニューヨークグローブ通信が発行した新聞も掲示してありますので、ぜひ探してみてくださいね。
つづいてはブロードウェイのメインともいえる、ブロードウェイ・ミュージックシアター(Broadway Music Theatre)です。
建物内は本格的な屋内シアターとなっており、「アンコール」「ビッグバンドビート」が公演されてきました。
現在公演中のビッグバンドビート~ア・スペシャルトリート~は2025年9月30日をもって公演終了してしまいますが、後継のショーも楽しみですね。
建物はとても豪華で、まさに本場のブロードウェイに来たかのよう。
正面にはギリシア神話の海神ポセイドンとマーメイドの石像があります。
「冒険とイマジネーションの海へ」をテーマにした東京ディズニーシーらしいこだわりです。
最後にご紹介するのはスターランド・ボールルーム(Starland Ballroom)です。
こちらは舞踏室。
窓には「Foxtrot(フォックストロット)」「Bunnyhug(バニーハグ)」など社交ダンスにまつわる言葉がずらりと並んでいます。
壁にはポスターも貼ってあります。
「Dancing nightly(毎晩踊る)」の文字からわかるように、こちらでは毎晩ダンスパーティーが開かれているようですね。
以上が、東京ディズニーシーのアメリカンウォーターフロントにあるブロードウェイの建物でした。
ブロードウェイは20世紀初頭のエンタメを支え、大きく成長させた街。
パークに訪れた際は、そんな背景も加味して散策してみては?
東京ディズニーシーのブロードウェイにある建物を深掘りしてご紹介しました。
ブロードウェイという名前の通り、エンターテイメントにまつわるお店が多かったですね。
景観を作る建物にもストーリーが詰まっているのが、ディズニーの粋なこだわりのひとつ。
ブロードウェイに訪れた際は、ぜひ建物にも目を向けてみてくださいね。
それでは、よい冒険を!